ちぐはぐな身体 鷲田清一 p165


「非風をまぜること」、
そこに生じるちぐはぐがかっこいいのだ。
でも稽古の末に得られるこの境地は、
ひょっとしたら、若い人がおしゃれにこりだして最初にすることからそんなに遠くないのではないだろうか。
若者はおとなの服を崩して着ることから服を着はじめる。
自分が何がおもしろくないのかよくわからないままに、
しかしやはり何かに対してどうしても抗ってしまう、そういう感覚がたぶん、
服のバランスを変えたり、わざとだらしなく着たりさせるのだ。

ファッションにはそういう意味で、はじめから不良性が、
いかがわしさがつきまとう。
もともと等身大のファッションなんてありえないのであって、
つねに背伸びするか、萎縮するか、
つまりサイズがずれてしまうのが人間だ。
パスカルは「不均衡」(ディスプロポーション)が人間だと言ったが、
ファッションは人間の存在のそのディスプロポーションをいちばん微細に表現するいとなみなのだ。
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by aknrkym | 2010-07-10 05:04


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