日本経済新聞2010.07.01 39面

壁は破れたか 『パス捨てた人心一新』(阿刀田寛)

2年半に及んだ岡田ジャパンの旅は、29日のパラグアイ戦(プレトリア)が終着点となった。
岡田ジャパンの来し方を顧みながら、日本サッカーの行く末にしばし思いを巡らせてみたい。


(中略)
生き馬の目を抜くようなW杯の戦いで、彼らが身の丈に合ったスタイルを最後に身にまとったことは確かだ。
守備的な戦術の採用に伴う大会前の人心一新で、日陰の立場に置かれてきた一群が、競うようにミエを切った。
全軍に落ち着きを与えた阿部、ボールを前に運び続けた松井、1トップに抜擢された本田である。
監督が守備を固める断を下したのは、何より中村俊が不振に見舞われ、パスサッカーを貫けるメドが立たなくなったから。DFの側から見ても、その方が理にかなっていた。
ゴール前を固める中澤と闘莉王の2人の性質が、このチームに深めの陣構えを選ばせたようにも思える。
空中戦に強いが裏に弱い彼らのために、周囲のスペースを消す。
2人の前に阿部という門番を立てたことで、速攻にからきし弱かった守備網の破れ目が縫われ
負担の減った2人はヘディングで大活躍。

半面、後衛をひしひしと並べた分、前線との距離は遠くなる。双方に渡りをつけるボールの配達人として、つなぎで生きる中村俊よりも縦に往復できる松井は適役で、しかも当人があつらえたように調子を上げていた。

そして本田。大会に至るまでの代表戦でみるべき結果を残していなかったこのMFに、
監督は「彼には得点を期待している」と、繰り返し明快な定義を与え、擁護しながらも責任を背負わせた。
この異端児には「前線から相手ボールを追う」という攻撃陣のルーティンワークから半ば切り離し、異端児として遇した。
これまで信を置いてきた岡崎に監督が見切りをつけたのは、今の日本のFWに得点を望むのは無理があると考えたからだろう。
ある種の諦観と居直り。
「それがどうした」と言いたげな監督の太い態度が、本田の1トップに妙な迫力を与えた。
(以下、略)
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by aknrkym | 2010-07-03 05:57


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